微分(微分幾何への道1)

これは, 主に自分のために, 滑らかな写像まわりの基礎事項を, この順番で理解すると微分幾何に滑らかに接続できるのでは(クソ寒ギャグ)と思う通りに並べているだけのもの第一号です. 果たしてこのページを表示する人間がいらっしゃるかは分かりませんが, この辺は方針や順番さえ決めてしまえば各行間は大して労せず埋められると思うので, 微分幾何の本を読み始める前の前提事項の整理の助けに多少はなるかもしれません. なお,  \mathbb{R}^nの点は常に縦ベクトルとして取ることにします.

まずは微分

次で定めておきます.

 \mathbb{R}^mの開集合からの写像F: U \to \mathbb{R}^nが点p微分可能とは
 F(p+h)-F(p)-dF_{p}(h) = o(h)
となるような線形写像 dF_p: \mathbb{R}^n \to \mathbb{R}^mが存在することをいう.

すると, 微分は線形写像なので, 行列表現が取れます. この行列表現を F'(p)と書いて, 微分係数と呼ぶことにします. この記号は高校の微分の記号と被りますが, 一変数の場合を考えるとちゃんと一致しています.

定義から次の各命題が従います.

F, G: U \to \mathbb{R}^nが共に点p微分可能として,  H : V \to \mathbb{R}^rを, \mathbb{R}^mF(p)を含む開集合Vからユークリッド空間への写像で, F(p)微分可能なものとしておきます. 更に, スカラ値の関数f : U \to \mathbb{R}も用意しておくと,

よって, 微分を行うとき, 和と積, 合成については, 各構成要素の微分に帰着することが分かります.

よく帰着する先のうち, 自明なものを述べておきましょう.

  • Fが定数関数のとき, dF_p = 0
  • 射影P_i : \mathbb{R}^m \to \mathbb{R} ; (p_1, \dots , p_m) \mapsto p_iについて, d(P_{i} )_p = P_i

ほか, 初等関数にもよく帰着しますが, ここでは述べません. 以上を組み合わせると, 例えば次が分かります.

ここまで, 微分係数の具体的な表示のことを気にせず性質を見てきました. 実は, 点p微分可能な関数Fは, 点pで任意の成分について偏微分が可能であり, 次が成立します.

F'(p)= \left[ \frac{\partial F(p)}{\partial x^1}, \dots , \frac{\partial F(p)}{\partial x^m} \right]

ここで, 角括弧に縦ベクトルを並べる表記  [\mathbb{a}_1, \dots, \mathbb{a}_n ] は, このように縦ベクトルを並べた行列を表すことにします.

この事実を利用して, いままで見てきた関係を偏微分によって書き表すと,

まず上記の射影との合成の微分の結果から,

  •  \frac{\partial F^i (p)}{\partial x^i } = P_i \circ \frac{\partial F(p)}{\partial x^i }

更に,

が得られます.

今日はここまで.